過去日記18


寒いのに薄着で元気そうにしてる陣たんと、陣たんの襟首つかんで勝手にどっかいかないようにしてる凍矢と、幽白とかによく出てくるイメージの、へたりこんで「私は終わりだ」ってぶつぶつ呟く偉い人が見たいの!
という妄想をダーーーーーーっとあやしうこそものぐるほしけれ。

・江戸時代に新田開発で生まれた農村。村の背後に山があり、昔は山から流れる川の水を利用して水田を作っていた。
・山には霊穴があり、神が住んでいると言われる。江戸時代に高名な旅の僧が立ち寄り、村が富み栄えるように霊穴の神を祀って行ったという伝説がある。
・今はほとんどの家が兼業農家か、農業自体を行っていない。
・村祭りは四年に一度、雪解けの頃に豊作を祈願して村の神社で行われるが、近年は高齢化が進んでいることもあって簡略化されている。

っていう感じの村で、雪害が相次ぐところからスタート。全国的に暖冬なのにこの村にだけ豪雪の被害が続いて気象学者も原因が分からず往生しているところに、人間界にいる妖怪から、村の上空にある雲から妖気を感じるという情報が入る。
その土地のなんか偉い人から魔界に事態解決の依頼があって、雪害なら呪氷使いがいいんじゃない?っていう魔界特有の雑な人選で凍矢が抜擢されて、凍矢が行くならオレもオレも!っていう陣がくっついて来て二人で人間界に行くことに。

で、そのあと、

・雪害にあった人たちの話を聞くものの、雪女がいただとか妖怪を見ただとかいう話はなし。納屋が潰された家や凍傷で入院した人間もいるが、妖怪の仕業にしては手ぬるい。

・村に降る雪からは確かに冷気を感じる。しかしこれほど広範囲に雪を降らせることのできる妖怪が術を使っているのならピンポイントで場所が特定できるはずなのに、それができない。妖気は土地全体から漂っている。

・村の老人に聞き込みをしても、昨夏に地震があり、今冬にはこの雪害があって、村全体が呪われているようだという愚痴しか出てこない。

・ところがそのさなか、一人の老人が、この雪害は、昨春おこなわれた村祭りで、祭りの行程のひとつを簡略化したのが原因だと言い出す。なんでも神社の裏にある登山道から村の背後にある山に入り、山をぐるりと一周している旧道を村人全員で練り歩く儀式だという。

・なにかヒントがあるかもしれないからと神社の裏から山に入る二人。そのとき陣が神社の横手に壊れた五輪塔を見つけて、
「なんだべアレ」
「ひどく壊れているが、どうやら五輪塔のようだな」
放っておいたら今にも塔めがけて駆け出しそうな陣の襟首を捕まえてそう言うと、襟首を掴まれたまま、陣は器用に首を傾げた。
五輪塔?」
人には到底不可能な長い年月を生き、名だたる名家にも出入りしてきた上位の魔忍だというのに、陣はあまりにもものを知らない。どうせ五輪塔と言われてもかりんとうの仲間か何かか程度のことしか考えないだろう。
「仏塔の一種で、密教で教える世界の構成分子を表したものだ。上の丸いのが空、その下が風で、火、水、土と続く」
上から二番目の、茶碗のような形のあれが風だ、と教える。風は自由を表す筈だったが、知識にそこまで自信がなかったので黙っておいた。
「凍矢はいねーだか?」
不意に問われて、とっさに答えられなかった。ぽかんと陣を見上げる。陣は丸い目をくるくると動かして、あの茶碗みてーなのがオレだべ、風があるなら雪はねーだか、と言った。
「ああ……、雪か。雪はない。強いて言えば水が雪に相当すると言えなくもないだろうが、やはり違うな。水は水、雪は雪だ」
そう言うと、陣は「ふうん」と分かったような分からなかったような顔で頷いて、それきり興味を失ったのか、あとはもう五輪塔の方は見向きもしなかった。
みたいな会話をしてたらいい。

・で、山道に入ると、確かに妖気を強く感じる。妖気が地面全体から発されているせいで詳しいことは分からないが、雪害の原因はやはりこの山にあるらしい。

・山を探索中に陣が獣道を見つけて、二人で行ってみると、旅の僧の伝説があるという霊穴に行き当たる。霊穴の入り口は大岩で塞がれていたが、中から風が漏れ出していて、陣は「狂った風の匂いがする」とか言う。

・二人で大岩をどかすと、中から突風が吹きつける。霊穴の中はすぐに行きどまりになる浅い洞窟になっていて、壁一面に血文字でびっしりと呪いの言葉が書かれていた。凍矢は壁に付いていた血を嘗めて、自分と似た霊気を感じる。だが霊穴にはもはや呪いの血文字以外の妖気はなかった。

・翌日、調査の進捗状況を確認しにきたなんか偉い人(土地の有力者で、この村の新田開発を主導した家老の子孫かなんか)に、村の神社の宮司に来てもらうように言う。なんか偉い人は事態が好転してないことに怒りつつ宮司を呼んでくれる。

・凍矢が「村祭りの儀式は、行道の一種だな」と言うと宮司が顔色を変える。さらに重ねて「おかしいとは思っていた。この村には寺がない。俺たちが人間界に出入りしていた何百年か前には、寺のない村はなかった。あの神社はもとは寺と習合されていたものが、廃仏毀釈で神社のみ残ったものだろう。神社ではなく寺の儀式なら、山を一周するように練り歩く呪法に意味が生まれる」と言うと、宮司は肩を落として、「こんなことになるとは思わなかった。伝説が本当だったとは思わなかったんです」とか言い出す。

・唖然としている偉い人に、凍矢が
「郷土館の記録を読んだ。貴様ら現代の人間の多くが読めない古文書でも、俺たちにとってはつい最近まで使っていた文字だ。貴様の先祖が新田開発を主導したこと、しかし数年続けての異常気象で雪が降らず、春先の雪解け水が不足して凶作に見舞われ、多くの死者を出したこと、すべてあの小汚いケースに投げ込まれた庄屋の記録に載っていたぞ」
「多額の費用を投じて開発した新田の運営が軌道に乗らず、上からは責められ、下からは恨まれて、貴様の先祖は窮地に追い込まれた。そこで旅の修験者に頼んで、あの山の霊穴にーーーーーー雪女を封じ込めたんだろう」
「雪が多く降れば雪解け水で村は潤う。雪女が逃げ出さないよう霊穴を封じて、力を抑え込むために数年に一度、山全体を行道して封印の呪法を強化していた。旅の僧が霊穴の神を祀ったという伝説は、人間が霊穴に妖怪を封じた話をうまく作り替えたものだ」
「霊穴で雪女は人間を呪いながら死んでいった。壁には血文字でこの土地を雪で覆い尽くすと書いてあったぞ。雪女の残した妖気は霊穴の影響で力を増し、それに比して封印の呪法は廃れていった。伝説の真実を知る宮司すら、既にそれを信じていなかったのだから無理もないがな」
「そして昨年の夏、地震によって、この土地の地下の気脈が乱れた。ここからは俺の推論だが、おそらく霊穴の気脈が土地の大きな気脈に繋がったんだろう。雪女の呪いは気脈を通じてばらまかれ、今では土地全体が妖気を放って雪雲を呼んでいる」
とか、ダーーーーーーッと話す。

・そうしてる間にも外が吹雪いて、地吹雪が窓にバシバシ当たる。それがまるで雪女が外から窓を叩いているように聞こえて、偉い人が「私はそんなことは知らん!もし仮に今の話が真実だったとしても、私の先祖がやったことだろう!私には関係ない!」とかヒステリーを起こす。

・陣が窓を開けて、風で上空の雪雲を掃う。青い空が広がるも、徐々に四方から雪雲が迫ってくる。「いくら追っ払っても、ちっとしたらまた集まって来ちまうだな」っていう陣に、偉い人が、「この村に雪害が出ないよう、君にこの土地にいてもらうわけにはいかないだろうか。給料は通常の職員の倍、いや、三倍払ってもいい」とか言い出す。

・困ってる陣と偉い人の間に凍矢が割って入って、「村の人間に聞いたぞ。次の選挙とやらが近いらしいな。貴様が唱えていた災害に強い街づくりが雪害のせいで台無しになって、支持者が減っていると言うのは本当のようだ」とか言う。

・「我が身可愛さに霊穴に妖怪を封じた先祖のように、己の地位のために陣をこの土地に縛り付けるつもりか。血は争えないな」って言って出て行く凍矢を追いかけて出て行く陣を見てうなだれる宮司と、膝を突いて「私は終わりだ」とかぶつぶつ呟く偉い人。

・四方から迫ってくる雪雲のせいで残りちょっとになっちゃった青空を見上げて「死んで、ぎょうどう?っつーのがなくなっても、ここから離れらんねーんだな」「はじめは自由になりたいと願っていたのだろうが、霊穴に何年も閉じ込められるうちに、この土地の人間を呪うことの他は考えられなくなってしまったんだろう」「そういうもんけ」「そういうものだ」みたいな会話をしつつ、「俺もきっとそうなるだろう。だが陣、お前は違う。お前は自由を忘れない」みたいな述懐を凍矢がして、終わり。