生存確認的に好きなこと呟く

高井几董
 名月に朱雀の鬼神絶えて出ず
 名月や金で面張るかぐや姫
 代官に化けて瓜食う狐かな
 野を焼くや小町の髑髏物言わず
 狸とは知りつつもまた碁を囲み

折笠美秋
 人ひとり死ぬたび一つ茱萸灯る
 パン屋へは二百歩銀河へは七歩
 ひかり野へ君なら蝶に乗れるだろう
 七世七度きみを娶らん吹雪くとも
 海の蝶最後は波にとまりけり

木下夕爾
 少年に蝉の森かぎりなく青し
 少年に帯もどかしや蚊食い鳥
 花鋏露けき石に置かれたる
 風の芥子真っ赤に定かならぬ記憶
 夏終わるもっとも高きポプラの蝉
 眠るべしかの沼も今は凍りおらむ
 枯野ゆく我が心には青き沼

金子兜太
 よく眠る夢の枯野が青むまで

木畑紀子
 脱け殻も亡骸もある森のなか時間止まらせて油蝉鳴く

江戸雪
 ヘブンリーブルー咲きつぎ知らぬ間に人傷つけて我の谷底
 傷つけたことよりずっと許されていたことつらく椿は立てり

岸原さや
 ああだからここにおります廃駅のまばゆい光に溶け出しながら

気象予報士の人
 君が火を打てば一面火の海になるのであらう枯野だ俺は

いろんな人の朝顔のやつ
 朝顔の紺の彼方の月日かな
 白朝顔何かが終わる身のほとり
 朝顔の藍を頼りに帰りなさい
 あさがおはむらさきがいいな水をやる